このイメージが頭から離れない
白い廊下をしばらく進むと左手にフスマがある。
天井のかなり高い部屋のようだ。
開けようとするが何か引っかかる。
勢いをつけて両手で引くと「ザ、ザザッ、ザーッ」と掠れた音をたて、引っかかりながらなんとかフスマは開く。
開けてみると、床下から天井までぶ厚い布団でびっしりだ。
押してみるとまったく抵抗無く腕がめり込む。
羽毛布団のようだ。
布団は端を揃え整然と積まれており、白い壁のようだ。太陽と洗濯ノリの匂いが身体を包み込む。
眺め廻していると、右上、手を思い切り伸ばせば届くところに小さな隙間が出来ていて暗くなっている。
左足を布団に差し込み、沈む布団をハシゴにして身体を伸ばす。
そうして隙間の高さまで登ったあと、隙間に両腕を差し込み伸ばした先の布団をギュッと掴み身体を隙間に引き入れる。
腰まで布団に突っ込んだあと、右手、左手、と交互に腕を伸ばし奥の布団を掴みながら完全に身体を引き入れる。
上にもかなりの枚数羽毛布団が積まれているはずだが、まるで重さを感じない。
上下の羽毛布団でふんわり包まれていると裸になりたい衝動に駆られる。
まっ暗で身体が横向きなので上着を脱ぐのに苦労するが、何とか全部脱ぎ終える。
肘がひっかかってなかなか脱げないTシャツはビリリと破いてしまった。
しばらくうつぶせになり休憩する。火照った身体にひんやりした布団が心地良い。
身体が充分冷えたので、平泳ぎの動きで全身に羽毛布団を感じながら前進する。
ひんやりサラサラした布団が心地良い。
20分ほどそうして進むと、羽毛布団をとおしてぼんやりした光を前方に感じる。
光の方向に泳ぎ進むと、光はどんどん強くなる。
尚も進んでいくと、「コツッ」と爪が硬い物に当たる音がする。
どうやら行き止まりのようだ。
布団の端を掴み身体を硬い物の方へ引き寄せる。
手のひらでペタペタ触ってみると、どうやらガラスのようだ。
ガラスと布団の隙間に手を突っ込み下の布団をめくってみたり、仰向けになって隙間に腕を伸ばしてみる。左右も同様にしてみるが、どうやらこの部屋は一面ガラスで覆われているようだ。
腹這いのままガラスを通して外を見ると、土砂降りの大雨が茶色い濁流で車を押し流している。
人の気配は感じない。
目の前の家が川に呑み込まれる。
ガラスがかなりぶ厚いのか、かすかな音しか聞こえない。
僕はここで暮らすことを決心し、しばらく寝ることにする。
息苦しくはないのですか?
羽毛がため込んだ空気の層を吸い込むことで苦しくはならないのです。